連載⑤最終回 企業が内定を出す決め手
就活を始める時期で差が出る
子に助言「就活は先手必勝」
面接官はプロ、対策は入念に
採用活動の最近の傾向として、就活生の行動データを分析する企業が増えたことが挙げられます。人工知能(AI)やビッグデータが広まる時代。就活生が注意すべきポイントも、以前に比べ変わってきました。まず会社説明会から見ていきましょう。
「当社は2~3カ月の間に10回の会社説明会を行います。早期の回に参加する学生はレベルが高いです。印象も良く、時間に正確で、たくさん質問してくれます。一方、後半はレベルが下がります。提出書類を忘れたり、遅刻したりする学生が増えます。これは毎年決まって繰り返される傾向です」
友人の人事担当者はこのように言います。つまり優秀な学生は早期に動くことが多く、遅くなれば、レベルの低い学生が増えてしまうのです。
当然、早期の回から多数の内定者が出ます。ぜひお子さんに、就活は「先手必勝」であることを、お伝えください。
会社説明会と同様に、履歴書やエントリーシート(ES)も早く提出した方が得策です。もちろん低レベルな内容では書類選考で落とされます。
そこで学校のキャリアセンターなどで添削してもらうと良いでしょう。何度か書き直せば説得力が増して、書類選考で落ちることは減っていくでしょう。しかしここで勘違いしてはいけません。
「私のESは、ほとんどの書類選考で通る。私は優秀な学生と判断された。面接ではこの内容を話せばいいだけだ。だから面接の準備は不要である」
このような自分勝手な思い込みから、面接で失敗する学生が毎年後を絶ちません。とても残念です。
人事は、ESの内容を面接で確認します。例えば「学生時代に力を入れたこと、学んだことは?」という定番の質問があります。この答に対して「なぜ?」「具体的に説明してください」などの質問を何度も繰り返し、事実かどうかを確認していきます。
これを深掘り質問などと言います。つまり面接とは「本当にがんばったのか」という事実を確認する場なのです。
そして深掘り質問に回答するためには、事前の入念な準備が必要になります。これを自己分析と言います。
事実が確認できれば、入社後もがんばってくれるだろう、という再現性が期待されます。このようにして内定が決まっていきます。
今まで説明したように、過去の就活生の行動データをもとに、人事はさまざまな知見を得ています。相手はプロ、一方の就活生はビギナーです。ゆえに初心者の自己流では勝負になりません。
学校のキャリアセンターや親御さんからのアドバイスが必要な所以です。今までの本連載を参考にして、どうかお子さんを温かくご支援ください。私も、お子さんの就活の成功を祈っております。
福島直樹(就職コンサルタント)
長野県出身。上智大文学部を卒業後、民間企業を経て1993年から就職に関するコンサルタント業務をスタート。学生の就職相談に応じ、就職・採用に関する執筆、講演活動なども行っている。また企業の採用戦略、面接などにも携わり、就職関連のテレビやラジオ番組にも数多く出演している。