最終日の結果
甲府5連覇県一周駅伝

 第60回山梨県一周駅伝競走大会(山梨日日新聞社、山梨放送、山梨県、県スポーツ協会、山梨陸上競技協会主催)最終日は3日、富士吉田市役所から甲府・山日YBS本社までの10区間88・5キロで行われ、初日に大会新記録で首位に立った甲府が2日間合計9時間2分0秒で優勝した。新型コロナウイルス感染拡大による中止を挟み、大会史上初の5連覇を果たした。
 初日2位の南都留がトップと9分16秒差で準優勝。3位は15分42秒差で南アルプスAだった。
 午前8時に18チームが富士吉田市役所を一斉にスタート。逃げる甲府に対して南都留や南アルプスA、甲斐Aが追う展開となった。甲府は4区間で区間賞となるなど盤石なレース運びを見せた。南都留は2区間、南アルプスAは1区間で区間賞となったが、追い上げることができなかった。
 甲府・山日YBS本社で行われた閉会式で入賞チームに賞状などが贈られ、2日間の熱戦に幕を下ろした。
 今大会は2021、22年と中止していた14区(県営本栖湖駐車場から身延町役場古関出張所)が再開。新型コロナによる大会中止などを含み、18年以来5大会ぶりに全20区間で行われた。

一斉に走り出す最終20区の一般高校女子選手=甲斐市内

拳を突き上げてゴールテープを切る甲府の20区・青沼麗后(区間2位)=甲府・山日YBS本社前
 
甲府一度も首位譲らず

 3日に最終日が行われた第60回山梨県一周駅伝競走大会。初日トップの甲府は、13区・橘田翔(山梨学院大)、15区・小島光稀(山梨学院高)、18区・望月朝陽(山梨学院高)、19区・小林柊(山梨学院高)の4区間で区間賞とし、一度も首位を譲ることなく大会5連覇を達成した。南都留は12区・大久保陸人(コモディイイダ)、16区・小山田雄登(光富士)が区間賞を獲得したが、前回大会に続き準優勝。3位は南アルプスA、4位は甲斐A、5位は笛吹A、6位は北杜、7位は都留、8位は甲州だった。今大会では14区と17区にコース変更があったため、両区と最終日、総合記録が大会記録となる。



区間新記録の力走を見せた甲府の15区・小島光稀=身延町内
 
一体感を醸成偉業達成

 軽やかな走りで上り坂を駆け上がっていった。甲府の15区、小島光稀(山梨学院高)は「体が良く動いていた。余裕があった」とペースを上げていく。レースが下りに入ると上林敬洋監督の「区間新が出るぞ」との声に背中を押された。さらにペースを上げて16区の六郷小中継所へ。28分58秒。2大会ぶりに区間記録を更新した小島の快走が、5連覇を決定づけた。
 たすきを受け取った時点で、2位の南都留との差は3分2秒。14区の依田崇弘(山梨学院高教)は前日に続くレースで疲労が残り、区間6位に終わった。「12〜14区は耐えて15区の小島で突き放す。そうすれば優勝が見えてくる」。コーチの望月健太が語ったプラン通りのレースで2位・南都留との差を5分以上に拡げ、「期待通りの走りで5連覇に導くことができてうれしい」と小島は喜んだ。
 「年に1回集まって走ればいいというものではない」と上林監督はチームづくりの信念を語る。毎年メンバーが入れ替わる中、陸上の大会や練習で甲府の選手と会うたびに声をかけ、積極的にコミュニケーションを取ってきた。体調や成長を確認しながら、1年をかけて一体感を醸成しようと力を尽くしてきた。レース後、「V5」を祝う仲間の手によって5回、宙を舞った。
 偉業を成し遂げたチームは今大会限りで解散となり、メンバーを再編して未踏の6連覇を目指すことになる。「やるからには優勝を目指す。1年をかけて若手選手の育成もやっていきたい」と上林監督。さらなる成長を期し、チームはまた歩みを始める。

南都留の15区・藤森駿(左、区間4位)が16区・小山田雄登(区間1位)へたすきをわたす=市川三郷町内
 
南都留 2年連続 2位
若手が奮闘来年に希望


 南都留は若手を積極起用して2年連続の準優勝を果たした。増山稔監督は「若い選手が頑張り、多くの経験を積んで成長できた」と来年につながるレースと強調した。
 最終日は藤森駿(星槎大)や、忍野村出身で初出場となった21歳の小山田雄登(光富士)、大森伊知朗(富士学苑高)ら若手ランナーが力走した。小山田は区間賞の力走で存在感を発揮し、2位の座を渡さなかった。
 チームは確かな好循環に入っている。昨年から若手も含め地元選手を育成しようと週2回の練習会を開催。継続的な強化と、学生が社会人になっても継続的に活躍できる基盤づくりを進める。小山田は「もっと成長して貢献したい」と語り、最終日の3人に加えて1日目の9区を走った大石歩六(吉田高)とともに来年以降の希望の星となる。
 若い「枝葉」だけでなく、地元への強い思いを持つ「幹」の選手の力走も準優勝の原動力となった。1日目の5区、2日目の14区でともに区間2位の上田誠人(忍野中教)は「学校の生徒や保護者、家族ら地域のためにという思いで走った」と熱を込めた。
 首位・甲府に9分16秒と大きく離され、増山監督は「これだけの走りをしてくれた選手がいるのに…」と目を赤らめた。監督の熱い思いは選手に伝わり、チームは上昇曲線を描き続ける。その力が甲斐路で解き放たれた時、34回大会(1997年)以来の優勝は実現する。




区間1位の走りを見せゴールする南アルプスAの20区・飯野摩耶=甲府・山日YBS本社前
 
南アA3位役割全う、甲斐A抜く

 南アルプスAは最終日に甲斐Aを抜き、56回大会(2019年)以来4大会ぶりの銅メダルを手にした。斎藤賢志監督は「100%の走り」と手放しでたたえた。
 1日目を終えて4位だった南アルプスAは、3位の甲斐Aに3分8秒の差をつけられていた。それでも最終日の逆転のシナリオは描けていた。アンカー20区には日本選手権でも活躍した飯野摩耶(SNOW)が控え、3分はひっくり返せる計算だった。
 選手たちは役割を全うした。序盤は経験豊富なベテランが粘りの走りでリズムをつくり、中盤以降は若手が勢いに乗った。15区で駒井元貴(南アルプス陸協)、16区で五味翔太(会社員)がそろって区間2位の快走で3位に押し上げ、終わってみれば4位・甲斐Aに4分19秒の大差をつけての3位だった。
 最終日だけなら甲府に次ぐ2位のタイムで走り抜けた。五味は「来年は甲府の6連覇を阻止できるように責任感を持って走りたい」と53回大会(2016年)以来の王座奪還を誓った。



山梨日日新聞 2023年12月4日掲載
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