甲府王座奪還 県一周駅伝
第62回山梨県一周駅伝競走大会(山梨日日新聞社、山梨放送、山梨県、県スポーツ協会、山梨陸上競技協会主催)最終日は7日、富士吉田市役所から甲府・山日YBS本社までの10区間89・3キロで行われ、甲府が総合9時間9分35秒で2年ぶり25度目の優勝を果たした。南アルプスAが2分58秒差の2位、前年王者の南都留が3位だった。
午前8時に17チームが富士吉田市役所を一斉にスタート。初日に3分8秒のリードを奪い首位に立っていた甲府は12区で南アルプスAに1分9秒差まで詰め寄られたが、13区の前多陽(山梨学院高)が区間新をマーク。再び2分以上のリードを奪い、逃げ切った。
甲府・山日YBS本社で行われた閉会式では甲府に優勝旗が授与された。8位までのチームに賞状、各区間1位に区間賞が贈られ、2日間の熱戦に幕を下ろした。
主将の窮地前多カバー
1年前に流した悔し涙を笑顔に変えた。「全員駅伝」で2年ぶりの王座に返り咲いた甲府の上林敬洋監督が、歓喜の輪の中で3度宙に舞う。指揮官は「駅伝はふたを開けてみなければ何が起こるかわからない。難しさを痛感するレースだったが、全員の優勝への思いが上回った」と感慨深げに語った。
初日で3分8秒の“貯金”をつくって臨んだ最終日。順風満帆に思えた栄冠への道のりは試練から始まった。チームの支柱である前田新太主将が12区で足をつるアクシデント。苦しみながら何とかたすきをつなぐも、2位の南アルプスAとの差は1分9秒まで縮まった。
窮地を救ったのが13区の前多陽(山梨学院高)だった。「前にいる選手を一人一人ターゲットにしながら走るだけだった」と、上り坂と下り坂を繰り返す11・6キロをテンポ良く快走。中学3年以来の区間新でリードを2分21秒に広げた。「自分らしい走りでチームに貢献できた。中学時代から指導してくれた上林監督を胴上げできてうれしい」と笑顔を見せた。
前回は史上初の6連覇を狙うもあと一歩で涙をのんだ。リベンジを誓った今回は、高校や大学、社会人チームなど、普段はそれぞれのフィールドで活動する選手たちが、「優勝奪還」を合言葉に一つに結束。互いに支え合い、“チーム甲府”で168・8キロを駆け抜けた。
メダルを首から提げた選手たちの目線は1年後に向かっている。前田主将は「連覇記録を更新したい。そのためにも来年も絶対に優勝する」。主役の座は譲らない。
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区間新記録の快走でリードを広げた甲府の13区前多陽=鳴沢村内
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南アルプスAの15区井上貴博(左、区間2位)から16区清水颯(区間1位)にたすきが渡る
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南アA“復権”の準V
最終日トップ、若手台頭
南アルプスAは9年ぶりのV奪還はならなかったが、最終日トップのタイムで総合2位となり“復権”を印象づけた。斎藤賢志監督は「想定以上の走りをしてくれた」と選手の頑張りをたたえた。
初日を終えて首位の甲府との差は3分8秒。「13区までにトップに立つ」と指揮官が描いたプラン通りに、最終日は序盤から飛ばした。11区の石塚邦明(東京ガス山梨)が区間3位、12区の赤池祥(神奈川大)が区間5位。最終日は全員が区間1桁の順位で堅実にたすきをつないだが、甲府の背中を最後まで捉えることはできなかった。
16区で清水颯(山梨学院高)、18区で鴨作大夢(東海大甲府高)が区間賞を獲得するなど、若手が台頭している。井上貴博主将(オリエンタル産業)は「若手が育ってきているので、明るい未来が見えている。手応えは感じている」と収穫を口にした。
3連覇を2度果たすなど、これまで8度の優勝を誇る。8年ぶりに首位争いを繰り広げ、斎藤監督は「来年こそ優勝できるチームにしたい」と意気込む。南アルプスAが駅伝王国の復権に向けて、一歩を踏み出した。
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南都留の15区加藤淳一(左、区間5位)から16区渡辺彩人(区間6位)にたすきが渡る=いずれも市川三郷町内
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南都留3位
後進が成長充実感
連覇は逃したが、南都留の選手たちには充実感がにじんだ。増山稔監督は「初めてこの駅伝を走る子もいる中、3位を死守できた。次の世代につながる大会になった」と前向きに語った。
主力級の大学生2人を故障で欠く中で優勝を狙ったが、指揮官は選手の育成も重視していた。主軸をこれまでと異なる区間に配置したり、年齢区分のない区間で高校生を起用したり。初出場で16区の渡辺彩人(いろと)=富士学苑高=は「3位以内に入りたかった」と悔しがったが、区間6位と粘った。
指揮官は「たいしたことのない選手が、(駅伝を)続けていく中で、成長しているのを見てきた」と育成の重要性を強調する。自身が持つ区間記録を10秒縮めた14区の志村竜星(山梨さえき)ら主軸も、経験を重ねて県下有数のランナーに成長したことが念頭にある。
11区で区間賞の中場雅之(ファナック)は「若い人から元気をもらっている」と笑顔。中堅、ベテランの活躍を見て若手が育ち、刺激を与える。南都留に、好循環が生まれている。
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山梨日日新聞 2025年12月8日掲載
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