南都留27年ぶりV県一周駅伝
第61回山梨県一周駅伝競走大会(山梨日日新聞社、山梨放送、山梨県、県スポーツ協会、山梨陸上競技協会主催)最終日は15日、富士吉田市役所から甲府・山日YBS本社までの10区間88・5キロで行われ、南都留が9時間14分17秒で1997年の第34回大会以来、27年ぶり3度目の優勝を果たした。6連覇を目指した甲府が4分37秒差の2位、甲斐Aが3位だった。
午前8時に18チームが富士吉田市役所を一斉にスタート。初日に約2分のリードを奪い首位に立っていた南都留を甲府が追い、甲斐Aや南アルプスAが食らいつく展開となった。南都留は一度も1位を譲らず、14区の志村竜星(山梨さえき)が区間新をマーク。甲府を引き離して逃げ切った。
甲府・山日YBS本社で行われた閉会式では入賞チームに賞状などが贈られ、2日間の熱戦に幕を下ろした。
南都留 光る安定感、育成実る
志村(14区)区間新の快走
27年ぶりの栄冠に輝いた南都留の選手たちは輪になって喜びを分かち合った。笑顔の選手たちの手で、増山稔監督が3度、宙を舞う。監督は「(自分が)駅伝に参加して10年以上たつが、当時は優勝争いに絡めないチームだった。時間はかかったが、若者が大きく成長してくれた」と“育成力”の勝利を強調した。
初日で王者・甲府に約2分の差を付けて迎えた最終日。11、12区で区間賞の好スタートを切ると、14区・志村竜星が「序盤の選手が良い順位だったので流れに乗れた」と区間新をマークした。最終日を走った10人中8人が区間3位以内と安定感が光る内容に、指揮官は「次から次に区間順位を落とすことなく粘れるのが、南都留の特長」と誇った。
大学や実業団で活躍した選手はごくわずか。地元での地道な練習と実戦を通じて一人一人が力を付け選手層は厚くなった。志村や18区で区間2位の近藤駆(ふじやま温泉)ら20代の若手の多くが学生時代から県一周駅伝に出場。当初は思うような記録を残せなかった選手もいるが、週1回の練習会や、大会に出続けることで成功と失敗を味わい経験値を高めた。この日が5度目の出場となる近藤は「最初の3年くらいはチームメートに助けられてばかりだった。自分が今度は助けたいと思った」と実感を込めた。
連覇がかかる立場となったが増山監督は「私を含めたベテランもそう簡単に(若手に)道を譲るつもりはない。若手が(ベテランを)乗り越えればもっと強いチームになる」と、チームのさらなる進化を確信する。27年ぶりの優勝は、これから南都留が刻む歴史の序章にすぎない。
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【県一周駅伝】区間新をマークした南都留の14区志村竜星(左)から同3位の15区大森伊知朗へのたすきリレー=身延町内
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【県一周駅伝】区間1位を獲得した甲府の13区橘田響=富士河口湖町内
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甲府「銀」6連覇逃す
重圧の中「全員駅伝」全う
重圧から解放された後に、悔し涙が頬を伝った。史上初の6連覇を逃した甲府のアンカー・清宮由香里は「すごく悔しい。自分の走りで巻き返したかった」と唇をかんだ。
1日目を終えて首位の南都留との差は1分58秒。差を埋めるべく、上林敬洋監督がポイントとして挙げたのは13区だった。11・6キロの長距離で、上り坂と下り坂を繰り返す難しいコース。任された高校2年生の橘田響(山梨学院高)は、「チームに勢いを与える大事な区間だと気持ちが入った」と、下り坂で一気にスピードに乗り、区間1位でたすきをつないだ。
しかし、14区以降はじわじわと差を広げられ、安定した走りを見せた南都留の背中を捉えることができなかった。4分37秒差での「銀メダル」に、指揮官は「6連覇という大きなプレッシャーもあった中、全員がよく頑張ってくれた」と声を震わせた。
連覇記録は「5」で止まったが、前田新太主将が「全員駅伝だった」と言うように、互いに支え合い甲斐路を駆け抜けた。上林監督は「一から出直してやっていく。来年は必ず優勝する」と、王座奪還を力強く誓った。
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【県一周駅伝】甲斐Aの16区大沢正和(右、区間1位)が15区片山寛隆(同2位)からたすきを受け、駆け出す=市川三郷町内
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甲斐A3位
変更選手起用に応える
甲斐Aは前回より順位を一つ上げて3位でフィニッシュ。最終日は南都留に次ぐ2位となり、星正幸監督は「当日変更した選手たちが起用に応えてくれた」とたたえた。
当日変更で16区を走った大沢正和(サンニチ印刷)は、これまで20回以上大会に参加しているベテラン。「とにかく差を縮めることだけ考えた」と、起伏に富むコースを序盤からアクセル全開で駆け抜け、区間賞に輝いた。同じく当日変更の19区小沢駿哉(東海大甲府高)は前日に8区を走ったばかりだったが、「体をよく動かせた」と疲れを見せない走りで首位と2秒差の区間2位に入った。
2017年に優勝して以降、2位、2位、2位、3位、4位、そして3位と、惜しい結果が続いている。「(3位は)100%の力を発揮できた上での結果。(優勝した)南都留との実力差はまだある」と星監督。「絶対的エースと呼べる選手が出てきてほしい」と、若い力に期待を寄せた。
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山梨日日新聞 2024年12月16日掲載
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