1日目の結果
甲府 大会新で首位

 第60回山梨県一周駅伝競走大会(山梨日日新聞社、山梨放送、山梨県、県スポーツ協会、山梨陸上競技協会主催)は2日、開幕した。初日は県庁から富士吉田市役所までの10区間79・4キロで争われ、盤石な走りを見せた甲府が大会新記録でトップに立った。
 長田公副知事の号砲で18チームがスタート。1、2区の中学生指定区間で甲府が連続区間賞で後続を突き放して有利にレースを展開し、初日4時間20分43秒でゴール。前回大会準優勝の南都留が6、8、10区を区間賞の走りで追い上げ、甲府と3分8秒差の2位とした。トップと7分40秒差の3位に甲斐Aが入った。
 最終日の3日は富士吉田市役所から甲府・山日YBS本社までの10区間88・5キロで実施。山斜面崩落に伴う改修工事などに伴い、21、22年と中止していた14区(県営本栖湖駐車場から身延町役場古関出張所)が今大会から再開する。2018年以来、5大会ぶりに全20区間で行い、総合優勝が決まる。
 

山梨県庁前を一斉にスタートし力走する1区の中学男子ランナー=甲府市内


拳を突き上げて第1日ゴールの富士吉田市役所に入る、甲府の10区・依田崇弘(区間2位)=富士吉田市内
 
2位に大差「全員駅伝」貫く
 甲府が王者の力を見せつけ、大会初の5連覇へ好発進した。全10区間のうち、半数の5区間で区間賞を獲得。2位の南都留に3分8秒差をつけ、「『全員駅伝』を体現できたことがこの(2位との)差につながった」と前田新太主将(山梨学院大)は充実した表情で話した。
 序盤から突っ込んだ。「最初から攻めの走りをしようと思った」。1区の前多陽(甲府南西中)が区間新記録で2位との差を30秒以上離してたすきリレー。初出場の2区の大崎美希(甲府北中)は「後ろとの差を大きく離したい」との一心で走り抜き、2位との差を1分以上に広げた。
 3区以降も盤石の走りで付け入る隙を与えなかった。先頭チーム通過時に一斉スタートとなる7区では伊東駿(山梨学院大)が区間賞。約2週間前にハーフマラソン大会に出場したことによる足の疲れや、向かい風の影響などから「新記録は狙わず、区間賞を取るために自分のペースを貫いた」と、確実に2位との差を広げた。
 上林敬洋監督は「1区・前多(陽)の区間新や2区・大崎(美希)の好走が他の選手にとって良い刺激となり、うまくリズムに乗ることができた」と言う。最も遅い選手でも区間6位。それぞれが100%の力を出し切って好走し、次の選手に力を与える。「全員駅伝」を最後まで貫いた。
 「V5」まで残り88・5キロ。上林監督は「最終日も1秒1秒にこだわる。気負うことなく5連覇に向けて着実に前に進みたい」と力を込める。60回の節目の大会で、新たな歴史が刻まれようとしている。


第1日ゴールの富士吉田市役所に入る、南都留の10区・増山稔(区間新記録)=富士吉田市内
 
南都留 力走2位
3分差 雪辱へ「射程圏内」

 全ての力を振り絞った南都留の10区・増山稔監督(BlueOcean)は、ゴールテープを切ると同時に倒れ込んだ。15分29秒の区間新記録を打ち立て、「全員がミスなくたすきをつなぐことができた。これで2位は仕方がなく、2日目も出し切るだけ」と言った。
 5区で2位に浮上し、以降は順位を落とすことはなかった。6区の志村竜星(山梨さえき)は「1秒でも差を詰めるためにいくしかない」と攻めの走りで区間賞をマーク。昨年の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)に出場し、県一周駅伝初出場の8区・大久保陸人(コモディイイダ)も「沿道の応援が力になった」と区間記録まで8秒に迫る好走で勢いづけた。
 中学生の2区間以外の8区間全てで区間4位以内に入る総合力の高さを発揮。9区の大石歩六(吉田高)以外の7人は社会人ランナーで、増山監督を筆頭に社会人でも陸上を続けて地域のために走る選手が原動力になっている。
 昨年は1日目で1位に立ったが、最終日に逆転されて2位。今年は甲府と3分8秒差の2位で最終日を迎える。志村と大久保は「悲観的な雰囲気はなく、ひっくり返せる」と口をそろえた。全員が力を出し切り、34回大会(1997年)以来、26大会ぶりの頂点を目指す。



甲斐Aの5区・工藤雄大(左、区間1位)が6区・中込吏涼(区間3位)にリレー=甲州市内
 
新旧融合 甲斐A3位
 甲斐Aは中盤以降に順位を上げて第1日を3位でフィニッシュ。星正幸監督は「終始追う展開で目標タイムには届かなかったが、3位に入れたのは良かった」と一定の満足感を見せた。
 5区の工藤雄大(甲府年金事務所)が区間賞でチームのリズムを好転させた。工藤は7月下旬に手術し、本格的に練習ができるようになったのは大会まで3カ月を切ってから。急ピッチでコンディションを高め「今持っている力は出せた」と笑った。
 チームは世代交代が進み、区間10位の3区、同6位の4区は初出場の選手だった。工藤は「若手が多くなっている中、3位に入ったことは次につながる」と前向きに話す。5〜7区を走った経験者がチームを下支えし、過渡期で迎えた今大会も1日目のトップ3を譲らなかった。
 首位の甲府には7分40秒差をつけられたが、誰も諦めていない。星監督は「最終日も陣容はそろっているので、少しでも甲府の背中を追う」と言い切った。




山梨日日新聞 2023年12月3日掲載

記事・写真・イラストの無断掲載・転用を禁じます。
Copyright 2023 山梨日日新聞社 THE YAMANASHI NICHINICHI SHIMBUN.